| 2000年の7月4日、ユトレヒトで行われたITF2000(International Trombone Festival 国際トロンボーンフェスティバル)で、ベン・ヴァン・ダイクは最初のソロCD "Nana" をリリースしました. |
Nana, あるひとつの名前というよりももっと多くのもの
曲目解説
タインとの10年間
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Nana、大絶賛![New]
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曲目解説 / Kees Adolfsen
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| Introduction | |
| バストロンボーン奏者のCDを聴こうなんて思っている人は誰でも、音楽のパレットのもっとも低いところから湧き出る、壮大な押し出しの強いサウンドにまず身構えることでしょう.だから、Nanaという名前にはすぐに疑問が沸くはずです.Nanaとはスペイン語で子守り歌のなかで使われる言葉で、お母さんの高く柔らかな声に子供は安らぎを覚えるのです.これはちょっと認めがたい矛盾じゃありませんか?相対論ともいえるのかもしれませんね. 普通に持っているであろうバストロンボーンのイメージ:豊かで幅広い音色、を思えば、このタイトルってすごく挑戦的だとも言えます.その挑戦的な姿勢は、このCD全体に流れている声楽的なアプローチというコンセプトに現れています.このアプローチは今回の選曲を考えるにつけ、そしてBen van Dijkと彼の仲間たちによる、これまで耳にしたことがないような叙情性と美しいメロディをもつ演奏を聴くにつけ明らかになってくるとおもうのです. アルバムタイトルとなっているNana、アンコールとしてCDの最後に置かれていますが、この声楽的アプローチというコンセプトを最も強く感じさせる曲です.信じられないような音域で奏でられるあたたかい、高貴な、肩の凝らないサウンドは真に聴くに価値のあるものといえるでしょう.Benはこの曲を自身で編曲し、またギターのパートも自分で演奏しています.フラメンコとリズミカルなメロディックな情熱的な音楽に対する、彼自身の愛を示しているといえます.しかし、まずは1曲目から話をはじめましょう. |
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| 1. Evocation / Nick Woud | |
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Evocationと題されたこの曲は、Benがラジオフィルハーモニー管弦楽団からロッテルダムフィルハーモニー管弦楽団(RPhO)に移籍したときに贈られたものです.彼の希望に応えて、作曲者Nick
Woudはこの曲をクラシックなスタイルの金管4重奏として書き上げました.このCDではロッテルダムフィルのメンバーであるAndre Heuvelmann,
Jos Verspangen, Pierre VoldersとBenがタインで作られた楽器を使って演奏しています. Nick WoudはこのCDでもう1曲、Dances for tenor and bass tromboneという曲も書いています.実は彼はラジオフィルハーモニー管弦楽団の首席ティンパニ奏者で、作曲は独学で学んだもので、それゆえに彼の曲の演奏は金管楽器奏者にとってチャレンジングであるといえます.また彼にはSerenadeというソロのバストロンボーンと4本のテナートロンボーンのための曲があり、これはBenとベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のメンバーによって録音されています. Evocationは古典的そしてバロック的な要素を使って作曲されていますが、ロマンティックで自由な形式をとっています.短いファンファーレの後すぐに叙情的なパッセージが続き、そしてこれらの要素に範をとった断片がファンタジックに展開していきます.この曲におけるバストロンボーンの突出した役割とは曲の中において自然な調子で他の楽器と絡み合っていること、言い替えれば他の楽器のまねをしていることだ、とでも言えるでしょうか.聖歌隊のソリストの役目をBenが説得力あふれる演奏で勤めていますが、他の3人の奏者の演奏も極めて繊細なものです. |
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| 2. Adagio from F-Dur / Albinoni | |
| Albinoniは18世紀初頭にソロ楽器と弦楽合奏のためのコンチェルトの伝統を最初に打ち破った作曲家だったと言えるでしょう.彼のコンチェルトは、長く、強いメロディラインを伴奏に従え、印象的で叙情的なソロが際だった特徴です.この特徴は彼のソナタについても言えることです.ヘ長調のソナタから編曲されたAdagioでは、バストロンボーンが極めて暖かで雄弁な音色で鳴り響くのを聴くことができます.ほとんどアーティキュレーションのないこの演奏に、私たちはBenのMichel Becquetの演奏に対する賞賛を見て取ることができるでしょう. | |
| 3. New Orleans / Eugene Bozza | |
| Eugene Bozzaはソロ楽器のための音楽、とりわけ金管楽器奏者のためのソロ曲を書くと言うことに対する強い共感に魅入られてしまった作曲家です.彼自身はヴァイオリン奏者で1948年までは指揮者としても活躍し、のちにバレンシア音楽院の院長を務めました. 彼の曲は演奏者にきわめて高い水準を要求するもので、しかし音楽的な効果は極めて高いものなのです.これは例えば金管楽器の音楽の歴史に残る曲の一つである、Bozzaの「金管五重奏曲」にも言えることです. Bozzaの金管のためのその他の曲と同じように、このNew Orleansも国立音楽高等院の試験のために書かれたもので、最初からバストロンボーン(とピアノ)のために書かれた曲の中では最も刺激的なもののうちの一つです. 3つのパートに分かれているこの曲は、まず最初にカデンツァで弾けるように始まり、ほとんど4オクターブにも及ぶ音域を完全に使います.ピアノ伴奏を聴くと、この曲がベンの持ち味を十分に活かすジャズの影響を受けていることがわかります.これは官能的な中間部における幅広いビブラートやアクセントのあるグリッサンドにもよく現れています.ブルーノートのモチーフを使った豊かな表現はBozzaのテナートロンボーンのために書かれた「Balade」だけのものというのではなく、例えばMilhaud(ミヨー)の音楽にもあることが知られています.リズミックな第3パートではトロンボーンとピアノはさらに均等な役割を果たしていて、トロンボーン奏者のスライドを動かす腕(おおくは右手)には全く休みがなくなってしまっているのです.巨大なインターバルによって曲は閉じられます. |
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| 4. Sonta in d-minor / Josef Bodin de Boismortier | |
| さて、Josef Bodin de BoismortierのSonta in d-minorを、彼が活躍した時代の聴衆と同じように、私たちもワインとともに控え目なおしゃべりをしながら聴くことにしましょう.Boismortierは彼の時代の音楽の寵児で、上流階級の聴衆のために軽く、大変に親しみやすい音楽を作り出しました.この新しいバージョンのSonataは、彼の膨大な音楽が時間を越えたクオリティをもつということのはっきりとした証明となっているといえるでしょう. | |
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このデュエットはもともと2本のチェロのために書かれたものですが、ベンはラジオフィルハーモニー管弦楽団のテューバ奏者であるBernard Beniersと共に演奏しています.Beniers氏はここではタインで作られたチンバッソという、もともとヴェルディやプッチーニのオペラで使われるイタリアを起源とする楽器を演奏しています.この演奏に聴くことのできる二つの楽器の同質さと、そして軽さは、これが普段滅多に聴かれることのない低音楽器のデュオによって演奏されているということを忘れさせてくれます. |
| 5. Etre ou ne pas etre / Henri Tomasi | |
| 最初から金管楽器のために書かれた音楽に戻って、Henri Tomasiの作品を聴くことにしましょう.55歳になるまで彼は輝かしい指揮者としての活動の傍ら作曲活動をしていました.作曲者としては彼は万華鏡のような作品を残しており、その中には特定のスタイルはなくさまざまに異なる音楽から影響を受けました.例えば、Faure、Pucciniといったフランス音楽(訳注:Pucciniはイタリア人)、コルシカ人の音楽からの影響.プロヴァンスやジョージアの民族音楽
- つまりジャズ − 、12音音楽など.ここでTomasiの音楽を特徴づけているのは、彼の歌や踊りやドラマに対する想像力なのです.後年になってTomasiは歌手と俳優とダンスとオーケストラを使った音楽を作り出したほどです. Etre ou ne pas etreには、これまで述べたようなさまざまな要素が凝縮されて使われています.この「ハムレットのモノローグ」ではトロンボーンの劇的な可能性が十分に花開いています.冒頭ではクラシック音楽の合唱の伝統に従って3本のテナートロンボーンを配し、ソロイストに対置されています.後の部分では彼らの役割は明らかに伴奏的なものとなっています.強烈な、抑圧された部分(例えば素早いグリッサンド)とかなり狭く、音楽が流れていくのがまるで拒否するかのような壮大でオープンなパッセージとの対比が効果的に使われています.モノローグのドラマチックな表現は音量やテンポ、リズムの強いコントラストによってより大きなものとなっています.曲の終結部ではソロイストは彼のモノローグで表現された問いを完全に開放しますが、答えは得られなかったのです. Pierre Volders, Remko de Jager とAlexander Verbeekを交え、私たちはオーケストラから独立したトロンボーン四重奏団としても活動している、ロッテルダムフィルハーモニック管弦楽団のトロンボーンパートのサウンドを聴くことができます. |
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| 6. Mr. Roberts / Iija Reijngoud | |
| アメリカでミスター・バストロンボーンと呼ばれているGeorge Robertsの豊かな、歌うようなサウンドが長い間バストロンボーン奏者のお手本でした.Gene Krupaのビッグバンド--ここにはUrbie Greenが同じセクションにいました--、そしてStan Kantonのバンドでの活躍後、彼は住居を西海岸に移しNelson Riddleとの出会いに刺激を受け、さらにはFrank Sinatraを初めとしTonny BenettやSarah Vaugnanとのレコーディングセッションでの経験に大きな刺激を受け、Robertsは独自の歌うような演奏スタイルを築きあげました.これは今でも百本以上の映画音楽のサウンドトラックで聴くことができます. | |
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Benはトロンボーン奏者でもあるIija Reijngoudに、Robertへのオマージュの作曲を依頼しました.この四重奏団の演奏で私たちはオランダのトロンボーン奏者たち:メトロポリタン管弦楽団のトロンボーンセクションと作曲者がジャズを演奏するのを聴くことができます.この3楽章で構成される組曲はバストロンボーンのパートに十分なソロが与えられています.伴奏パートはバリエーションに富んでおり、例えば最初の部分では伝統的なビッグバンドセクションにとっては、クラシックの世界での「バロック」とも言えるであろうミディアム・スイングが現れます.Bart van LierとIija Reijngoudが交互にリードパートをつとめながら即興演奏を行います.そのあとBenによる「作曲された」即興演奏が続きます.第2部のバラードではリリカルなソロ・バストロンボーンと甘い調子のトロンボーンアンサンブルとの対比を聴くことができます.Reijingoudによる短いソロの後、つづく第3部は伝統的な手法から全く離れて曲が進みます. |
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このCDのプロデューサーでもあるMartin van den Bergが演奏する美しいバストロンボーンとBenとのデュエットは、3本のテナートロンボーンが演奏するポップとラテンミュージックのミクスチャーの伴奏を従えてソリッドなグルーヴ感を醸し出しています.またここではJan Oostingによるすばらしいリードを聴くことができます. |
| 7. Dances for tenor and bass trombone / Nick Woud | |
| Joe Alessiは現在最も賞賛されているテナートロンボーン奏者のひとりです.彼はニューヨークフィルハーモニー管弦楽団のソロ奏者兼首席奏者というだけではなく、トロンボーン四重奏団でソロをとっている録音などでも頻繁に登場します.Nick Woudの作曲によるDancesではAlessiとBenが等しく豊かな感情を表現しています.短3度と2度がドミナントの跳躍として使用され、東洋的な雰囲気を醸し出すオープニングの後は、ハバネラに聴かれるような、ワルツとタランテラ、勇壮なバルカン民族の踊りが混ざり合っており、これらのメロディや伴奏は双方の奏者に割り振られています.パ・ドゥ・ドゥは一聴の価値ありです. | |
| 8. Two Mottets / Anton Bruckner | |
| 私は、いくつかの理由からAnton BrucknerのTwo MotettsはこのCDのハイライトであると思っています.この曲では上はアルトトロンボーン、下はコントラバストロンボーンを含む完璧なトロンボーン四重奏を聴くことができ、この四重奏はすべてTheinの楽器で演奏されているのです.オランダの内外でBenはコントラバストロンボーンの伝道者として大変有名です.この曲で彼は非常に有名なニューヨークフィルハーモニー管弦楽団のトロンボーンセクションと共に演奏しています.このCDのコンセプトからすればあえて同じ作曲家のAequale(あるいはベートーヴェンの同名の曲)ではなく、このLocus IsteとVexilia Regisというふたつのモテットをレコーディングしたという選択は成功したといえるでしょう.トロンボーン以上に4声の和音を等しい強さで美しく響かせることの楽器はない、ということを改めて感じさせます. | |
| 9. The Moose / Saskia Apon | |
| テューバ奏者のHendrik Jan Renesのサウンドは自分にインスピレーションを与える最も重要な源泉であると、Benは言います.それゆえにRenesの委嘱作でありまた彼に献呈されたSaskia
Aponの作曲したThe Mooseが、Renesのソロ演奏によって収められたのでしょう.Renesはこの曲の演奏にTheinのC管テューバを使用しています. このThe Mooseという曲、こういって許されるならばある種のルーズ(Loose)な作曲がされており、一方でテューバ奏者にはテューバという楽器が持つあらゆる可能性をあからさまにしてみせるように、と要求されています.重く・衝撃の強いものから軽く・歌うもの.5オクターブにも渡る広大な音域を使った名人芸.Renesは有名なソロテューバ奏者であり、またアンサンブル奏者でもあり、また演奏活動だけではなく現在ロッテルダム、ハーグ、アントワープの各高等音楽院で後進の指導にも精力的に取り組んでいます.またBenとは同じロッテルダムフィルハーモニーのメンバーとして、このオーケストラの金管パートの土台を強固に支える役目を担っているのです. 作曲者のSaskia Aponはハープ奏者で作曲は独学で学びました.彼女はロッテルダムフィルハーモニー・ブラスアンサンブルの専属作曲家でもあります. |
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| 10. Sasnin's Aria / Glinka | |
| もちろん声のような効果を狙ったというこのCDにおいてアリアを忘れるわけにはいきません.Benが編曲をしたGlinkaのオペラ「Ivan Susanin - ある皇帝の生涯」から「スサニンのアリア」.1836年に発表されたこのオペラによって、グリンカはロシア国民音楽のスタイルを打ちたてました. | |
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伴奏を勤めているピアニストはAlla Liboで1992に彼女の生まれ故郷であるサンクト・ペテルスブルクを離れ、現在はオランダに住んでいます.Benはこの曲を伴奏してもらうのに彼女以上に適している人を知らない、とまで言っています.また彼女はロッテルダムの高等音楽院と強い関係をもっています.このアリアには勇壮華麗さはなく、ヴィルトゥオーソ的な側面を見せることもありません.シンプルでメランコリーに溢れたうたは「大人のためのNana」と呼ぶこともできるでしょう.慎み深い演奏は印象深く、心を打ちます. |
| 11. The Chief / John Stevens | |
| John Stevensにより作曲されたThe Chiefは、Emory Remingtonのニックネームに基づいています.彼はほとんど50年の間イーストマン音楽院のトロンボーンのクラスを指導してきた偉大な教師でした.Benもトロンボーンのクラスをもち後進の指導にあたっていますが、彼同様の名声を獲得しつつあるといえるでしょう. そのロッテルダム音楽院では非常にユニークな教育上のコンセプトと、クラシックのクラスを担当するGeorge Wiegel, Joergen van Rijen, Pierre VoldersとBen van Dijk、またジャズのクラスを担当するBart van LierとIija Reyngoudという6人の非常に有名なトロンボーン奏者を教師として揃えていることでよく知られています.生徒は一人の教師につく、というのではなくすべての教師に接することができ、これによりクラシックからジャズまであるいはロックから世界中の音楽を学ぶことができるというわけです. 音楽院では毎週全員が集合してウオーミングアップのセッションがあり、つづいて30人ものトロンボーンの生徒が参加するトロンボーン合奏が行われます.このようにロッテルダム音楽院ではトロンボーンに関するオールラウンドな才能を開花させるべく、将来の上達に役に立つ種まきが行われているのです.もっと説明が必要ですか?6声が美しく積み重なって演奏されている様に耳を傾けてみてください!彼らは彼らが伴奏しているバストロンボーン奏者のサウンドの一つ一つに驚くべき示唆と音楽を演奏する喜びを聞き取ることができるのです. |
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| 12. Canzone / Eddy Koopman -- Girolamo Frescobardi | |
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「フレスコバルディがまだ発見されていない惑星の上で音楽を書いた、ということを想像してみないか?」 打楽器奏者で作曲家でも編曲家でもあるEddy Koopmanに、発せられた質問でした.彼はフレスコバルディの主題をシンセサイザーを使った音楽に編曲しましたが これは幅広いBenの音楽的な興味からしてもかなり異色なものでした.異なる素材が飛び交い、ごく近いところから衝突します.アイルランドの民族音楽、みょうちきりんな教会のオルガン、濃い味つけの弦楽器のサウンド、けばけばしい合唱.こんなカオスの中でバストロンボーンは -- とりわけ優雅なしかし技巧上は大変難しい -- 自分の道を見つけていきます. |
| 13. Nana / Traditional | |
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さて、もういちど「Nana」にもどって、質問を繰り返してみましょう.このCDはわれわれがバストロンボーンという楽器に対して持っていた音色や可能性というイメージを膨らませてくれたでしょうか?きっとそうですよね. しかしBenが目指したのはそれ以上のことです.彼は多くの曲で音楽の背後で楽器のサウンドを響かせると言うアイデアを実行しました(最後のギターのサウンドがそのよい例だと言えます).アクセントは彼が伝えたかったものを表現しており、それゆえこのCDは楽器の特徴というものを強調したものというよりは、徹頭徹尾彼の音楽的な個性そのものであるということができるでしょう. |
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タインとの10年間 / ベン・ヴァン・ダイク
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| このCDは私とタイン兄弟との10年間にわたる協業の結果であると思っています.タイン兄弟が工房をかまえているブレーメンに行くたびに、私には豊かなインスピレーションが沸いてくるのです.マックスとハインリヒの兄弟は金管楽器の理想のサウンドに対するイメージやクリアなアイデアを持っているというだけではなく、このようなイメージやアイデアを如何に現実のものにするかという知識と技術を持ちあわせているという意味で希有な存在です.
彼らが制作する楽器が奏でるサウンドのクオリティは、私に何度も何度も新しく深い表現の可能性をもたらしてくれるのです. |
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| 一方で私の両親であるPietとHettyのインスピレーションは、いつでも私の音楽的な生活の指針でした.私はこのCDを私の父に、愛と感謝の念を添えて献呈します.また、Aaltje,
Mark, Erikの3人が与えてくれた厳しい耳やサポート、永遠の愛について感謝しています. また忙しい中このレコーディングに彼らの貴重な時間を割き、音楽的な才能を提供してくれたすべての友人や同僚たちに対して感謝の言葉もありません.また特にこのCDでニューヨーク・フィルハーモニックの友人たちと共演できたことを誇らしく思っています. もうひとり、ここでMartin van de Bergの名前を挙げておきたいと思います.彼はこのCDのプロデューサーとして陰に日向に私を助けてくれました.彼の多大な献身や、効果的で強力なプロジェクト管理、情熱的な計画なくしてはこのプロジェクトが成功するチャンスはなかったと思います. 多くの人々の努力の結果と同様、タイン兄弟の情熱的なサポートなくしてこのCDが生まれることは不可能だったといえるでしょう.このCDを通して彼らが制作する楽器に対する私のこだわりを、多くの友人や同僚、そしてタインの楽器に興味をもっていただいた方々に感じていただければ幸せです. |
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ベン・ヴァン・ダイク Who's Who
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ベンは1955年オランダのハーグ生まれ.最初のトロンボーンのレッスンを、父でありハーグフィルハーモニー管弦楽団のソロトロンボーン奏者であったピエト・ヴァン・ダイクから受けました.その後ハーグの王立高等音楽院に学び1980年にバストロンボーンのソロ・ディプロマを獲得しました.これはオランダ国内ではバストロンボーン奏者がうけた初めてのディプロマで、これが契機となってオランダのすべての高等音楽院でバストロンボーンを学ぶことができるようになりました. 彼はこの後ロサンゼルスのジェフ・レイノルズとロジャー・ボボの許で研鑽を続けました.偉大な奏者であり教師でもあるこの2人のもとで、シカゴ交響楽団とエドワルト・クラインハマーの録音や、ジョージ・ロバートのスタジオ録音に参加したことなどは、バストロンボーン奏者としての彼の才能に大きな影響を及ぼしました. 彼はトロンボーンの音楽に閉じこもるのではなく、異なるスタイルの音楽をできるだけたくさん聴くことが極めて重要だと考えています.彼は日常生活の中でフラメンコやポップグループ、ジャズアンサンブルやさまざまなスタイルの室内楽を聴いたり演奏したりするのが大好きです.好きなミュージシャンは:モーリス・アンドレ、ミシェル・ベッケ、ヴァレリー・ゲルギエフ、プラシド・ドミンゴ、フランク・シナトラ、バーバラ・ストライサンド、エル・キャメロン・デ・ラ・アイスラとパコ・デ・ルチア... |
| 1976年に彼はオランダ放送フィルハーモニー管弦楽団のバストロンボーン奏者として採用されました.23年間このオーケストラに在籍したあと、1998年9月よりロッテルダムフィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者、ヴァレリー・ゲルギエフの強力な招きで同管弦楽団に移籍、以降ソロ・バストロンボーン奏者として活躍しています.この若いオーケストラのしかし高い可能性を持つ金管低音セクションをトップにまで引き上げるため、ゲルギエフ氏は彼の経験を必要としたのでした.彼はこのオーケストラで古い友人で偉大なテューバ奏者であるHendrik
Jan Renesと再びタッグを組むことになりました.彼はシンフォニックオーケストラ以外にもオランダウインドアンサンブルやダッチ・ジャズ・オーケストラで活躍し、またさまざまな録音活動にも精力的に参加しています.
また1976年に結成され、既に14年にもわたるオランダ金管六重奏団での活動は特筆に値します.このアンサンブルはヨーロッパにおけるブラスアンブルの始祖のうちの一つといってもよい存在です. ロッテルダムに移籍する前に彼はアムステルダムのスゥイーリンク高等音楽院の教授に就任していましたが、ロッテルダムへの移動に伴って1998年9月からはロッテルダム高等音楽院で後進の指導にあたっています. 1992年にデトモルド、1994年クリーブランドで開催された国際トロンボーンフェスティバル(International Trombone Festival: ITF)に講師兼ソリストとして招聘され、また1996年のブタペスト国際金管フェスティバル、1997年にフランスのリールで開催された国際金管コンペティションにも招聘されました.この年にはブランデンブルク交響楽団の演奏会にソリストとして登場し、バストロンボーン用に編曲されたバスやバリトンのためのオペラアリアを演奏しました.1998年の2月には2週間のマスタークラスとリサイタルをアメリカの著名な大学、ジュリアード音楽院、クリーブランド音楽院、オーバーリン音楽院、ライス大学、北テキサス大学などで行いました.この期間中、ニューヨーク・フィルやクリーブランド交響楽団、ヒューストン交響楽団からの招待を受けました. 1999年の3月にはスパニッシュ・ユース・オーケストラのコーチを担当し、同年8月、さらに2000年8月には韓国で2週間のマスタークラスを開講しました. 1995年から1998年までドイツの国際トロンボーン協会の会長を務め、国際トロンボーン協会(International Trombone Association: ITA)のボードメンバーを務めていました. |
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