Nana, 大絶賛!
世界各地の批評をあつめました

Joshua Brown
ITA Journal 2000 Fall


ベン・ヴァン・ダイクのデビューソロレコーディングであるNanaは、これを手に取ったトロンボーン奏者たちを間違いなく興奮させるものとなった.オープニングファンファーレとしておかれているNick WoudのEvocationから、アンコールとしておかれているアルバムタイトルまで、このCDにはヴァン・ダイクと世界的に有名な金管楽器奏者たちとの美しいサウンドが詰めこまれている.

ベン・ヴァン・ダイクはロッテルダムフィルハーモニー管弦楽団のバストロンボーン奏者である.コントラバストロンボーンの大家としてよく知られた存在である彼は、彼はバストロンボーンにおける希有な才能を示すために幅広いスタイルとジャンルを用意した.Nanaと名付けられたこのアルバムの一つの目的は、バストロンボーンを上質の美しさを持った、メロディ楽器として認知させようと言うことにある.彼はこれを成し遂げ、そのうえもっとたくさんのことを成し遂げた.ヴァン・ダイクのサウンドのパレットは桁外れに多い.彼は聴衆に、そのおのおのの音楽に応じた完璧な色彩を聴衆に見せているのだ.

このCDにはたくさんのハイライトがあるのだが、それはEvocationという曲で始まる.この金管4重奏のために書かれた曲は華麗な金管の響きを振りまきながら始まるが、すぐにバストロンボーンと残りのメンバーの間で、微妙な響きを持ったリリカルなパッセージを使った質問と--答えを探求する姿勢にかわる.作曲者のWouはロッテルダムフィルのティンパニ奏者で、この曲をロッテルダムフィルのメンバー、Andre Heuvelman, Jos Verspangen(トランペット)、Pierre Volders(テナートロンボーン)、そしてヴァン・ダイクのために書いたのである.

Ilja ReijingoudのMr.Robertsは偉大なバストロンボーン奏者に捧げられたオマージュで、3本のテナートロンボーンと2本のバストロンボーンのために書かれている.書法はビッグバンドにおける典型的なトロンボーンのサウンドを彷彿とさせる.ヴァン・ダイクはソロパートとすさまじいトロンボーンセクションでのプレイを交互にこなす一方で、さらにBart van LierとReijingoudによる即興ソロもこなすという超人ぶりである.このセッシそれは金管4重奏のために書かれたセッションにはJan OostingとMartin van den Bergも加わっている.近い将来にこれら才能にあふれるオランダ人ジャズトロンボーン奏者の名前を聞けるようになるのは疑いようがないだろう.

このアルバムの頂点はブルックナーの2つのモテットにある.ヴァン・ダイクはニューヨークフィルハーモニックのトロンボーンセクションの中に入って、私がかつて聞いたことがないような上質の演奏を聴かせてくれる.このアンサンブルはトロンボーンアンサンブルの聴きどころである荘重な雰囲気を、達人らしく見事に表現している.4声のパートは、Joe Alessiのアルト, David Finlaysonのテナー, Donald Harwoodのバス、そしてヴァン・ダイクのコントラバスで演奏されているが、彼らはすべてタインの楽器で演奏している.

Mikhail GlinkaのSusaninのアリアは、今回ヴァン・ダイクがピアノ伴奏を従えて演奏している数少ない曲である.ヴァン・ダイクはこの陰鬱な曲をバストロンボーンのために編曲した.シンプルなメロディに最小限のピアノ伴奏が添えられるこの曲は、ライナーノートには「大人になったNana」として説明されている.

アルバムタイトルを聴いてこのCDは終わるのだが、私たちはヴァン・ダイクのまた異なった才能を聴くことができる--それはフラメンコ・ギタリスト.この軽いメロディの音楽はこのCDの終わりにふさわしい.ヴァン・ダイクのバストロンボーンは、 彼が開拓したこの楽器の高いテッシトゥーラという高みにまでかけ昇っていく. ギターの演奏もすくなくともマタドールを目指す新人の闘牛士としては一級品である.

ベン・ヴァン・ダイクはこのすばらしいレコーディングにおける、様々なスタイルの演奏を通して、彼はなんともスタイリッシュな多方面への才能を示したのだった.

今回の試聴で私にとっても最も無難しい作業であったのは、この様々な曲の中でどれに焦点を当てて批評するのか決めなくてはならないという点であった.The Chief, Dances等々、すべての曲が語られる価値があり何度も繰り返して聴く価値がある.同様にこのセッションに参加したどのミュージシャンたちも皆すばらしく、誰を特に選ぶということはできない.Nanaはあなたがトロンボーン奏者であるならば、コレクションに絶対に加えるべきものである.

   
Steven Saunders
英国トロンボーン協会機関誌 "Trombonist" 2000年秋号


去る9月にプロムスで「パルジファル」を聴いた人は誰でもロッテルダムフィルの美しく温かみのある、どぎつくなく、耳障りでもなく、大き過ぎもしないサウンドに感銘を受けたことだろう.

彼らの美しくも暖かいサウンドの一つの理由は、ブラスセクションの統一感にある -- トランペットは柔らかい音のするロータリートランペットを奏で、トロンボーンは柔らかく美しい音のする楽器を使っている.さらテューバ奏者のHendrik jan RenesはC管の楽器を、しかし世の中の趨勢とは異なり巨大なものではない、を使い、メゾフォルテではまるであなたがステージの彼の隣に座っているかのような、クリアで焦点の定まったサウンドを作り出している.私はこんなサウンドをロイヤルアルバートホールで聴いたことがない.

ロッテルダムフィル、というあまりなじみのないオーケストラにこれほどまで非常に高い水準の金管奏者達がいて、彼らがオーケストラの中である種の流れを作り出していることに、普段はオーケストラで仕事をし、オフステージではブラスアンサンブルで活躍しているイギリス人の金管楽器奏者も舌を巻いていた.

しかし、私だっておなじなのだが、このCDを聴いていたならば、誰もプロムスでは驚かなかっただろう.オランダからバストロンボーンが飛び立ったのだ.このCDはセンセーショナルである.

ベン・ヴァン・ダイクはロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団のバストロンボーン奏者で、タイン社(ドイツの金管制作工房で、このオーケストラのトランペット、トロンボーン、テューバを制作している)から協力を得て、自分の好きな音楽を録音したのだった.

このCDをつくるにあたって、多くの彼の友人の音楽家達が参加しているが、これにはニューヨークフィルハーモニックのトロンボーンセクションが含まれており、あの有名なJoe Alessiがアルトトロンボーンを使ってBrucknerのMotettsを演奏している.

Bart van LierとIlja Reijngoudがベン・ヴァン・ダイクのGeorge Robertsへの賛歌に参加して、すばらしいジャズソロを演奏している.

バストロンボーンなどというレパートリーのきわめて限られた楽器にとってはたぶん、決定版となるであろう模範的な演奏が2つ納められている.BozzaのNew Orleans -- 学生達はこの曲はいったいどのように演奏するのかと悩む必要もない.これは完璧な演奏だ.

バストロンボーンのために書かれた価値ある音楽を集めた完全なカタログを作り上げるためのもうひとつの作品は、FrescobaldiのCanzona.しかし、ちょっと待て!バスギターシンセサイザー、エレクトリックフィドル、ドラムマシン、そしてミーントーンオルガン.アイルランド民謡と最先端をいくダンスナンバーの華やかなクロスオーバー.この曲を4回か5回、繰り返して聴いてみるといい.きわめて独創的だということがわかる.ソロ以外の伴奏は(カラオケとして)すぐに売り出されることになるだろうと思う.リサイタルの最初の曲目としてはなんと最適なことか!

注文があるとすれば、CDの解説書は、何週間にも渡ったであろうレコーディングの間のもっと詳しい情報やスナップ写真などを納めてほしかった.たぶん次のレコーディングでは彼はもっとたくさんの情報をわれわれに与えてくれるだろう.

このCDのタイトル、スペイン語で子守歌を意味する"Nana"は、私にとってはちょっとしたミステリーだった.私がこれまで聴いた中で価値があり、興味を覚えたトロンボーンのCDの中では、まずいちばん変わったタイトルだといえるだろう.しかし夢中で聴いていると突然に最後の曲になってしまい、この曲で彼は侮りがたい腕前でスパニッシュギターを演奏している.フラメンコギターとスペインの香りが濃厚なトロンボーンをオーバーダビングして一人で演奏しているのだが、これには驚くばかりだ.

   
Dean Olah
Online Trombone Journal

Dean Olanはトロンボーンと音楽教育をトレド大学で学び、文学士号と博士課程を終了した.

現在彼はノースキャロライナ州ローリー市でコンピューターソフトの会社でマイクロソフトの講習クラスを受け持つ傍ら、ローリーとデュルハムの両オーケストラ、カサブランカジャスオーケストラで演奏している.また彼はプライベートなブラススタジオを保有している.

奥様のモーリーはノースキャロライナ週のジョンストンカウンティの大学と英才教育センターでヴァイオリン、ヴィオラ、チェロを教えており、ローリーシンフォニーのメンバーでもある.

"Nana"、スペイン語で子守歌を意味するこのタイトルは、バストロンボーン奏者のCDとしては誤記かと思われるかもしれないけれど、世界的な金管楽器奏者の参加を得て、ベン・ヴァン・ダイクは彼のバストロンボーンが、メロディ楽器としてまさにこのタイトルを付けるに値するものであるということを示したのだった.

ベン・ヴァン・ダイクは、元オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団のバストロンボーン奏者で、アムステルダムにあるスヴェーリンク音楽院の教授をつとめており、現在はロッテルダムフィルハーモニー管弦楽団のソロ・バストロンボーン奏者で、ロッテルダム音楽院教授である.初めてのソロ録音にあたり、彼はバストロンボーンにおける彼の能力や、スタイルや編曲の要求に応じてサウンドを柔軟に変化させていく高い柔軟性を示すために、幅広いスタイルとジャンルの音楽を選んだのだった.

このCDを初めて聴くときには、ボリュームの位置に注意すべきだ.オープニングのEvocationは、ロッテルダムフィルハーモニックのメンバーからなるブラスカルテットによる咆吼から始まる.その後すぐに曲はバストロンボーンとそのほかのメンバーによるクラシックとバロックのスタイルが溶け合った、リリカルに絡み合いに静まっていく.この4つの楽器の音色や低い音域におけるメロディの融合は特筆すべき点である.私は最初にこの曲を聴き終えた後、本当に4本で演奏しているのかを確かめるためにもう一度聴き返したのだった.このCDに2曲を提供しているNick Wouldは、みずみずしくユニークなスタイルのうちにいくつかのジャンルを統合していくという能力を賞賛されてしかるべきである.

このCDの大きな特徴の一つは多くのトロンボーン奏者の録音からは省かれてしまうデュエットが納められていることにある.ニ短調のソナタはもともと2本のチェロのために作曲されたものだが、ベンはベルディやプッチーニのオペラに使われていることで知られる、元々イタリア生まれの楽器であるチンバッソを吹くBernard Beniersと共にこの曲を演奏している.これはとりわけ深い音域によって、骨の折れない演奏となっている.

もうひとつのデュエットはDancesと呼ばれる曲で、Joseph Alessiの才能を際だたせたものとなっている.再びNIck Woudの筆によるこの曲で、私たちは演奏者に対しては挑戦を要求し、聴衆に対しては楽しみを与えるというジャンルの融合を耳にするのだ.このサウンドと才能のコンビネーションは、この1曲でこのCDを買う価値があるといえる.

ベンはMr.Robertsと名付けられた、彼の恩師George Robertsに捧げられた曲で彼のスイングに対する能力を示している.Ilja Reijngoudによるこの曲は3本のテナートロンボーンと2本のバストロンボーンのために書かれているが、ビッグバンドにおけるトロンボーンのサウンドのエッセンスをよく捕えており、ReijngoudとBart van Leirによる炸裂するソロと、いうまでもなく身震いするようなヴァン・ダイクの演奏を聴くことができる.

このアルバムにはBrucknerのMotettからVexilla RegisとLocus Isteも収録されている.ニューヨークフィルハーモニックのトロンボーンセクションにベンが加わって、アルトからコントラバスまでの響きを作り出しており、ただただすばらしい.4声のハーモニーをこれほどまでに均質に、深く響かせることのできるのは、トロンボーンをおいてほかにないであろう.

最後の2曲はヴァン・ダイクの比類のない多芸さを表しているのと同時に、彼の音楽的なスタイルへのきわめて正しい理解の証拠となろう.Canzoneではバストロンボーンは珍妙な、いや興味深いシンセサイザーやドラムマシンやアイルランド民謡や教会のオルガンや聖歌隊の様々なサウンドの中にぶち込まれてしまっている.

アルバムのタイトルピースにもなっている最後の曲はバストロンボーンとのオーバーダビングでフラメンコギターの腕前も披露している.この曲はバストロンボーンの高音域を用いたすばらしくロマンテックな曲である.

何人もの腕こきのプレイヤーがべン・ヴァン・ダイクの元に集まり、マスターピースとなる録音を作り出した.彼の才能と多様性とそしてサウンドの結合こそ -- もしあなたがトロンボーン吹きならば、あなたのCDコレクションに加えないという理由はなにもない.

   
Benno Reinhard
Das Schallstueck

このCDはベン・ヴァン・ダイクと彼のトロンボーンを製作しているトロンボーンメーカーのマックス・アンド・ハインリヒ タインの10年間にわたる協業の成果である(訳者注:タイン社はトロンボーンのみならずトランペットからテューバまで製作している).

このファンタスティックなCDは私たちが普通にバストロンボーンという楽器に対して抱いているイメージをそのまま形にしたものであるが、一方でこの演奏を聴いた者は誰でもバストロンボーンやコントラバストロンボーンという楽器が大変演奏するに難しい楽器であるということを忘れ、様々な音楽のスタイルやこのCDのタイトルにあるような音色にのみ集中してしまうのだ.

ベン・ヴァン・ダイクは、間違いなく私達の時代のトップクラスのバス/コントラバストロンボーン奏者に数えられる.彼はとてつもなく難しい曲であっても、信じられないほどのエレガントさと軽さでこなしてしまう -- たとえば、ボザの「ニューオーリンズ」 --しかし最上のヴィルトウォーソも忘れない -- たとえば「Etre ou ne pas erte」、あるいはすごいスイング「Mr.Roberts」 --.結論としてこのCDはすべてのバストロンボーン奏者にとって必須である!

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